はじめてのお泊まり/天詩 『天真先輩、お風呂ありがとう。』 そう言って目の前に現れた後輩を見て、俺は思わず息を飲んだ。 普段見る事のない姿。 今日は初めて詩紋がうちに泊まりに来た。 金髪のくるくるした綺麗な髪は、雫を残して輝いている。 俺が見とれていると、ふいに 『天真先輩?どうしたのぼーっとして…』 なんて、少し心配そうな顔をして俺の顔をのぞき込んでくる。 男に使うのはどうかと思う言葉だが、その姿は妙に愛らしい。 (何なんだこれはっ?!) 『しし、詩紋っ!!あんま近寄るなよっ…』 『えー?どうして??』 『どうしてもだっ!!』 俺のいつにない挙動不審を疑って、ますます詩紋は怪訝な顔をする。 『ねぇ天真先輩!一緒に寝ていい?』 追い打ちをかけるような詩紋の言葉に愕然とする。 『何でだよ?!』 『だってベッド一つしかないし……』 『あ』 その晩、すやすやと可愛い寝顔で眠る詩紋を隣にして、俺は何故か一睡も出来ずに夜を明かした。 俺がこの気持ちの正体に気づく日と、後輩だった詩紋が恋人になる日はそう遠くはない。 [*前へ][次へ#] |